再見「ロングランエッセイ」の+と-
28:「 ツリーハウス 」 住宅雑誌リプラン43号(1999年1月1日)より一部転載
敷地の持つさまざまな条件は、そこに建てる住まいの形に影響を及ぼすので、敷地選びは慎重でなければならない。「住宅を計画しているが、土地の取得の相談にのってくれるか」という問い合わせに、土地は建物の造り方を決めてしまうので、十分時間をかけて探されたほうが良いと答えた。約80坪のところに25メートルを越える樹木が7本もあり、林というより、森に近い。これらの大木をなんとか残して住宅を建てることとなったが、なかなか難しい。「ツリーハウス」という本を見付けた。大木の樹の股に、まるで鳥の巣のように造られていて、長い梯子が付いたり、廻り階段を付けているが、日常の土地を離れて、爽やかな風と一体になれそうである。小さな庭いじりをはるかに凌駕し、天空に意識が解放されそうであった。
しかし、住宅金融公庫の融資を受けることができないので、ツリーハウスを造ることはあきらめたが、樹木を残して建てることにはなった。大きな窓を造り、あたかもツリーハウスのなかにいるような気分になれる仕掛けも造ったが、やはり、ツリーハウスの持つ爽やかさに及ぶものではない。
+:半年近く雪に、おおわれる北海道の家は、二階に居間を置くのが良いとすすめてきた。
北国の冬の太陽の高さが低いので、窓から入ってくる陽射しが、部屋の奥まで届く。周りに二階建ての多いところだと、一階では隣の陰になってしまうが、ニ階だと陽差しが、奥の壁まで届く。特に東側から入った朝日は、廊下の突き当たりまで届くので、家じゅうに朝の爽やかさが広がる。夕方には、西陽が温かみのある光が、廊下の奥まで届いて、家じゅうに夕暮れのやわらかさが広がる。高い樹木のある敷地の冬も同じだが、夏は、樹木の葉っぱが、きつい日差しを塞いで、風だけを通してくれるので、暑さ知らずで過ごすことができる。お日様の入り方や風の抜け方や樹木の植え方を考えて、住まいを作っていくことが、その土地の環境にふさわしい住まいづくりである。
近頃、環境にやさしい社会を作ろうと、住まいだけでなく、建築や街も同じように、日差しや風の抜け方や植栽の仕方まで、丁寧に考えることが求められてきているが、これまでの日本の暮らしを支えてきた、里山のつくられ方を学ぶのが良い。