再見「ロングランエッセイ」の+と-

10:「  向こう三軒  」  住宅雑誌リプラン25号(平成6年7月1日)より一部転載

伏見と厚別と真駒内にすんでいる仲の良い家族が、そろって移り住みたいというのを手伝って、三軒の家ができた。別々の家であるがコーポラティブハウジングと呼んでよい。三軒をまとめて「向こう三軒の家」と名付けた。
きっかけは、子どもたちのために一軒家を建てようと思っていたGさんに、見晴らしの良い土地が見つかったことである。一軒置いて隣の土地も売りに出ているのを知って、50代のKさんに「近くに住もうよ…」と誘った。雪かきも、庭の手入れもいらないマンション住まいにすっかり慣れていたKさんだが、見晴らしの良さと近くに住めるということから、思い切って一軒置いた隣の家に住むことにした。今度は、その話を聞いたGさんの奥さんの両親、Uさんが落ち着かない。一軒家を構えているにもかかわらず、どうしても近くに住むと言い出し、売りにも出されていなかった、Gさんの隣の土地をなんとか手に入れ移り住むことにした。すでに建っている一軒の家を挟んで三軒の家を新しく建てることになった。
Uさんの居間に置かれた大きな丸いテーブルには、この三軒に住む大人たちがいつでも集まれるように、七つの椅子が用意されている。GさんとUさんの家に囲まれた中庭は、外にある居間のように使われ、人が集まる。子どもたちにとっては、とんでもない大家族であるが上手につき合っていて頼もしい感じである。
近くに住む人たちのつながりこそ、町を作る基本であることを教えられた。

:向こう三軒両隣というのは、道の向こう側の三軒と両隣の合わせ6軒が仲良くすることで、暮らし易くなるという意味である。道路を挟んでいることが大事で、道路を一緒に管理するということです。
札幌市中心の南西部には、東西に抜ける中通りがあるが、南北に通る大きな道路に突き当たって、まっすぐ通り抜けられないT字交差点が多い。札幌市は、車の通行を良くするために、道路幅を広げて、まっすぐ通そうとしているが、反対である。通り抜けない方が、年寄りや子供達にとって安全で、2階建ての家が立ち並び、道幅4〜5メートルだとひとつの界隈感が生まれ、向こう三軒両隣という近所感が生まれる。めんどうになり易い、ゴミ出し、除雪、落ち葉の処理などの折り合いもつけ易くなる。さらに、この道を「小路」と名付けて、西線の「煉瓦の家小路」「けやき小路」、西屯田の「とうふや小路」などと呼べば、いっそう連帯感が生まれる。友人に「新道市場小路」と称して焼酎まつりをしている例もあるが、楽しいです。