再見「ロングランエッセイ」の+と-
5:「 天 井 」 住宅雑誌リプラン20号(平成5年4月1日)より一部転載
近頃、座る高さの低いソファやテーブルが重宝がられているようです。特に、天井の低いマンションに住んでいる人に多いようですね。今まで使っていた椅子やテーブルを、マンションに持ち込んでみると頭が天井に近くなりすぎて、鬱っとうしくなるからです。なんとか頭の上の広さを大きくしようとして、背の低いソファやテーブルを使うようになったのです。
日本の木造建築は、世界に誇れる伝統と技術を持っていました。和風の建築を作る基準に、木割というものがあり、天井の高さは部屋の大きさによって決めるように書かれています。8畳間は2メートル43センチであり、12畳間は2メートル79センチになります。これだけの高さをとると、天井が鬱っとうしいとは思われません。これは、畳に座っている人にとって天井の高さのことですので、椅子に座ることが多くなれば、その分、頭の位置が高くなり、天井が低く感じられて、鬱っとうしくなるわけです。
といっても、むやみに天井を高くすることはできません。せめて、住む人がいじけないような天井の高さにして欲しいものです。
十:キッチン・ダイニング・リビングをつなげ、広く使うようになり、天井を高くするようになったが、ゆったり落ち着いた雰囲気が無くなった気がする。床とか壁は、贅沢なものにしても、だんだん見えなくなるのに、天井は、住む人や住み方が変わっても、いつも目一杯見渡せるので、雰囲気づくりには有効です。使い勝手には関係ないからと何も考えない無表情の天井が多すぎる。天井の役割をもっと見直した方が良い。