再見「ロングランエッセイ」の十と一

圓山彬雄です。リプランで、連載していたエッセイに、コメントをつけてみようと思ったついでに、ブログに投稿することにしました。よろしく。

4:「家 庭」→「冬の庭」  住宅雑誌リプラン19号(平成5年1月1日)より一部転載

11月半ば、小雪がちらつきそうな日、庭に出したイスに腰かけ、月を見ながら、オンザロックを飲む人がいる。アウトドア志向の彼の家には、「夏の居間」と「冬の居間」がある。
「冬の居間」というのは、いわゆる室内のあたたかい居間である。「夏の居間」というのは、庭に枕木を敷き並べて造られた屋外の居間のことである。ここは、庭の高さより60cmほど掘り下げて造られ、三方が自分の家の壁に囲まれているため屋内と言っても良いほど落ち着いた雰囲気がある。そこに置かれたテーブルについて、挽きたてのコーヒーを飲む時など、まさしく夏の居間と納得させられる。しかし彼は、この寒さの中、ダウンジャケットを着込んで、「外の居間」で星空と酒を酌み交わすのだという。巧みに配置された樹木に守られながら、冷たく澄んだ空気のなかで、高ぶる気持ちも次第に透明になってゆくに違いない。「夏の居間」が冬も使える「外の居間」になった。

:原文の一部を削除して文を変えたので、タイトルを「冬の庭」に変えました。ダウンジャケットを着て、冴えた月を眺めながらオンザロックをたしなむ、バラ育ての名人の主に、礼をいうことにしました。雪とか寒さが、暮らしの豊かさのひとつだということを教わり、ありがとうございました。それと「キバアカシア」を「キバナアカシア」とずーっと間違えていて、すみませんでした。