再見「ロングランエッセイ」の十と一
圓山彬雄です。
リプランで、永年連載していたエッセイに、コメントをつけてみようと思ったついでに、ブログに投稿することにしました。年四篇で百二十もあるので、週に一編でも二年を超えますが、よろしく。
1:「 素 顔 」 住宅雑誌リプラン16号(平成4年4月1日より転載)
眼の回りを黒っぽく化粧している人に、そのからくりを聞いてみた。まつげにマスカラ、まぶたにアイシャドウ、目の縁にアイ・ライン。鏡に顔をつけるようにして眼の回りをていねいに仕上るという。これらの化粧の色は、どれも暗い色で、小さな眼を大きく見せる効果がある。化粧をすっかり落としきった素顔を見る機会がないので、その化粧の効用は、わからないが、わからないのが良いのかもしれない。人の顔を、上手に見せることは決して悪くはない。
しかし、住まいはこれからつくるものだから、その目鼻立ちを美しくつくることができるはずである。にもかからわず、何も考えず無造作に開口部をつくってしまい、不細工な顔をつくっていることが多い。
素顔を美しくつくるのは、簡単なことである。窓の大きさや位置を決めるときに、住まいの顔立ちを考えながら、慎重に決めていけば、思いもよらぬほど、美しい素顔の家が生まれる。住む人のためだけでなく、道ゆくひとのためにも、美しい素顔をつくる、優しさが欲しいものである。化粧のいらない素顔に美しい住まいの建つ町は、美しい町並みをつくる、そんな町にしたいものである。
十:近頃は、寒冷な北海道の状況に対応した技術が集積され、開口部、特に既製のアルミやプラスチックの開口部は、見付けも細く颯爽となったが、プロポーションの種類が、まだ少ないので、住宅の顔のデザインは、苦労する。夕暮れ時にマンションの窓に、次々に灯り付いて、ほとんどに灯がつく。かつては、深夜まで灯の灯らなかったところも、灯がつくようになったのは、コロナのせいに違いないが、これで良いのです。夜遊びやめて、早く帰って、美しい窓を造れば、良い素顔になるんです。