□地方からの発信 旭川地区会 柳
COVID19のパンデミックにより世界的に大混乱が起きてから1年が経過し、未だ終息の目途はたたず感染は拡大し続けています。各国でワクチンの接種が始まりましたが副反応も心配される中、社会活動や個人の行動は今でも制限を受け、暮らしそのものが大きく変わらざるを得ない状況に迫られています。これまでも人類は幾度となくパンデミックと遭遇を繰り返し、私たちの生活や都市のあり方に様々な影響を及ぼしてきました。New Normalやwithコロナなどの言葉が独り歩きしていますが、今までとは違う生活スタイルが確立され、習慣として身につくまでには多くの時間がかかりそうです。
そんなコロナ禍の中、個人的に昨年はリノベーションの仕事を2件完成させました。
築63年の醸造所倉庫を工場・店舗・Café・officeなどの複合施設(Hokuo Lab)として減築・保存・再生のデザイン。もう一つは、建築後37年経過し放置されていた倉庫をconversionし住宅に再生するプロジェクトです。人口減少が続く地方都市では、加速度を増し高齢化率が上昇し子供や若者の数が減少、労働人口の減少により街のエネルギーも失われていきます。人口減と共に大きな社会問題に取り上げられるのが空き家の増加です。持ち主を失った建物は急激に老朽化を進め、周辺環境に悪影響を及ぼしてしまう可能性が高いのです。しかし、使えるものを簡単に壊してしまうことには抵抗がありますし、リノベーション等で手を加えることにより数十年利用できるポテンシャルもあります。コロナ禍の中、私たちは忘れかけていた大切なものを取り戻すチャンスなのかもしれません。経済優先の消費社会から脱却し、生活や暮らし、街づくりの質を問われる時代に変革していくのではないでしょうか。古いからと言って簡単に捨ててしまうのではなく、ちょっと立ち止まり、深呼吸をし、見る角度を変えると新しいものが見えてくるはずです。
今回のリノベーションの取り組みは、6年前から私たちが活動(JIA北海道支部 旭川地区会が中心)してきた現旭川市庁舎(佐藤武夫設計)の保存・再生に関する活動の延長線上にあり、個人の所有と公共建築という違いはありますが、家族の歴史ある建築物における保存・再生や発想の転換によるconversionは、今後の新たな街づくりのモデルケースとして広く一般市民へと発信し、モノづくりの一つの可能性として大切に活動を続けていきたいと考えています。
柳雅人 (次回は赤坂副支部長です。)